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一度だけ聞いたことがある。僕はトロンボーンを何とかやっと吹いているが、どうすればうまくなれるのかと。
彼女は、笑いながら「楽しめれば、それでいいのよ」とだけ答えた。
彼女には、音符と音符の間に宇宙が見えるのだという。そして、自分が演奏するというより、体から自然に音楽が溢れ出てくるようだという。
凡人の僕には理解しがたいことであった。
別々の大学へ進学し、その後、彼女は都市銀行へ、僕は彼女の住む隣街の市役所へ就職した。ずっとつき合いは続き、そろそろ彼女との結婚も考え始めていた。
彼女の宇宙飛行士の夢は、どこかへいってしまったのだろうけど、二人の小さな幸せの芽が成長していると思っていた。
ナオミにプロポーズするために指輪を用意した。
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