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踊る大福帳
物の化け物で物の怪だ。
その大福帳はお金持ちになるための本だ。
表紙に大黒様が描いてある。
作ったのははぐれ陰陽師として生きていた娘だ。
その大福帳は金持ちの依頼で作った。
最初にお金の大事さが書いてある。
所々にお金持ちは吝嗇(りんしょくと読みけちという意味)でないと繰り返し書いてある。
まずお金を崇めよと書いてある。
家は小さいほどよい。四畳半で充分だ。
お金を眺めながら飯を食べろ。銀シャリは贅沢だ。今は大根粥がオススメだ。
欲しい物が有れば金を貯め、貯まったら買わずに買ったつもりになって貯めろ。
服は丈夫な服を着るな。走ったら底が減るから絶対に走るな。
そんな事が書いてある。
吝嗇のススメだから分かりやすくはある。
貧福論のように発展こそが真の富であるという難しいことは言わない。
単純に数字の話だ。
細かい内容は読んだときで微妙に変わる。
何を買った気になりいくら貯めるか書き込んでいく。
そうやってお金を貯めるのだ。
そんな本を青年が手に入れた。
フジイチという名の青年はその本に従いお金を貯めた。
四畳半で通帳を眺めた。
通帳を眺めて水で割った酒を飲んだ。
つらい時は大福帳が励ました。
大福帳と歌い踊った。
明日があるさ明日がある金さえあればそれでいいと歌い踊った。
「諦めるな金が全てだ」
ある日フジイチの親が死んだ。
親が住んでいた家に藤市が住むことになった。
こんな広い家耐えられない。
フジイチは叫び死んでしまった。
大福帳はフジイチと通帳をぺろり食べたのだった。
明日があるさ明日がある。
金さえあればそれでいい。
命なんてタダだ命なんてタダだ金さえあればそれでいい。
大福帳は誰もいない部屋で歌い踊った。
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