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雨の奇跡
役者は全てロケ車で待機させて、スタッフ連中は皆ばらばらに、じりつくアスファルトに腰を下ろして、放水車を待った。
雨や雲の流れを待つ『天気待ち』というのはあるが、放水車を待つというのも奇妙な話だった。
このシーンはカット数としては多くない。竹原の狙いとしては、彩演じる主人公の感情を映像として捉えて、力のあるクライマックスにしようというものだった。彩のここまでの演技を見て、竹原にはある程度、勝算も見えたのかもしれない。
「どうだ、あの子は」
「いいシャシンになると思うよ」
竹原は空を見上げた。俺もつられて、上を見た。さっきより、雲の流れが速くなった気がした。
「……後入れするか」
竹原がポツリと呟いた所で、小山がこちらに走ってきた。
「雨雲が来てます。これ」
小山はスマートフォンのリアルタイム降雨予報のサイトを俺達に見せた。俺と竹原は顔を見合わせた。
「これは、」
「お前、持ってンのかもな」
竹原の肩を叩き、俺は立ち上がった。
「早田さん、カメラ準備して!濡れないようにカバーかけて」
「何?どういう事?」
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