代打助監督

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「どうせもう頭数に入れてるんだろ?」  竹原は安堵した様子で撮影日程を告げた。  主演はこれがピンク映画初主演となる倉科彩、助演にストリッパーでもある六月ジューンと長谷川美沙。ジューンは脱ぎがあるが、こちらは本当にベテラン女優の美沙は脱ぎ無し、彩の母親役だ。この布陣で行くという事は、主演の倉科彩が引っ張らないと現場は、というよりも映画が成立しない。竹原は座付き脚本家の小松原と毎回、小技でくすぐって見せる手法が得意でこの辺りの小芝居も必要になってくるだろう。その小ネタの為の小道具なんかを、チーフ助監督の江尻は言われなくても台本の行間から拾って準備して配置できる気の利いた男だった。そろそろ一本立ちの話も出ていた筈だ。 「ツイてないね」  俺は江尻に向けたのか自分に向けたのか分からない言葉を、口の中だけで呟いた。  マンションスタジオでの倉科彩と相手役の津上との会話シーンから、撮影は始まった。しかも食事しながらの会話だ。これは女優の芝居力が分かるシーンだった。スタジオ都合とは言え、この件から撮影できるのは、竹原にもその後のプランニングが修正できるよい香盤と言えた。
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