代打助監督

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 竹原は下手にカットを割らず、長回しで撮ってしまうコンテにしていた。カットを割れば芝居のテンションも変わり、新人女優では芝居が安定しない。アフレコをせずに同時録音になった今では、相手役側と主役側でそれぞれ撮りきってしまった方が、効率が良いという判断だった。あとは彩が、台詞を入れてきてくれるかどうかだ。  カメラの早田がファインダーを覗く。 「ヨーイ、ハイ!」  竹原のよく通る声で、シーンは始まった。俺は動くカメラに合わせて、彩に当たるようにレフ板の光を調節しながら動いた。女優が綺麗に撮れている事が、映画の大前提だ。何灯も当てられないピンク映画の現場では、光の質がものを言う。デジタルカメラで細部まで映るようになった事で、余計にその質が問われると俺は考えていた。  彩は光を浴びると、実際の存在以上に映える女優に思えた。女優がみんな、この素質を持っている訳ではない。あとは芝居、だった。
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