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『雨降らし』
「後藤ちゃん怖いでしょう?虐められてない?」
彩にそう訊くジューンを、俺は小突いた。「怖いけど、大丈夫です」
彩も負けずに応じ、場が沸いて空気が和む。ジューンなりの新人女優への気遣いだった。彩はこの後のシーンでジューンとレズの絡み
を撮る。彩自体はAVでもレズOKの女優だが、ピンク映画では勝手が違うから、その事への配慮かもしれなかった。
彩とジューンのレズシーンはとても熱のあるものになり、事後のシーンを幾つか撮って撮影初日は終わった。
キャストを全部降ろした後のロケ車の中で、俺は気になっていた事を竹原に訊いた。
「雨は、ポスプロで入れるんだろ?」
作品のクライマックス、彩演じる主人公が雨の中で、死んでしまった父を想い、泣くシーンがある。時間も予算も、おまけに人手もかかる『雨降らし』はピンク映画ではまず行わない。何より昔と違って、雨を降らせてもいいロケ場所の確保が難しいのだ。
「やるよ」
平然と竹原は前方を見ている。
「どこで?」
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