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代打助監督
「応援?なんだよ応援って。江尻がいるだろ?」
就いていた現場の撤収がほぼ終わった頃の電話だった。今週はこれで久々の連続オフなのだ。もっとも、来週早々にシナリオ・ハンティングに出ると、例のベテラン監督からは言われていた。だからこれ以上、予定を入れられるのは迷惑だった。
「だいたい、助監三人なんてどこの大監督だよ。ギャラ出るのか?」
ここの所は、ビデオシネマもピンク映画も人手が足りていないのが常態だ。ほぼ助監督はチーフとセカンドで回している。近頃では手の空いている役者が炊出しをしてくれるような有様だった。
「そんな事言わないでよ。こっちだって困ってんだから。江尻の親父が倒れちゃったんだよ。実家に帰らなきゃいけないからって。あいつ長男だし。応援っていうか、代打?みたいな」
電話口の中堅監督の竹原も、心底困っているようだった。竹原は最近発表した作品がどれも評価が高く、先に一般映画に行った城崎の後に続こうというポジションだった。
「ここはベテランの後藤ちゃんがさぁ」
「助監督のベテランなんてのは、何の価値もないんだよ。で、何時集合なの」
「やってくれる?」
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