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少女の呼び名が「おチビちゃん」から「お嬢ちゃん」に変わり、学校で「1-10346」という立場を与えられるようになった頃、少女はこの街があまり嫌いではなくなった。
街中にあふれる明かりは、よく見ればどれも違っていて、ネオンに彩られた街は、さながら宝石箱のように見えた。
街の中心にそびえたつ塔はブコツで全然きれいではなかったけれど、バースデーケーキのロウソクのようで、無いと寂しいもののように思えた。
ゴテゴテと電飾に飾られた建物にはやっぱり入れてもらえなかったけれど「お嬢ちゃん、大人になったらおいでね」と言われるようになった。
両親は二回変わった。
少女が楽しいと思うことは相変わらず少なかった。けれど、周囲の大人たちが少女と話すときに、とても楽しそうになることがわかった。
家でモクモクと煙を吹かしている母親も、軒先でとても苦い琥珀色のジュース(少女が飲ませてもらったら顔中でむせ返ってしまった)をおいしそうに飲んでいるおじさんも、道端で楽器をジャンジャカ鳴らしているお兄さんも、少女が話しかけるとクルっと笑顔になるのだ。
大人になればもっと楽しいことがたくさんあるのだろう。
早く大人になりたい。
少女は枕元でそう願った。
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