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朝6:00
奇跡的に目覚ましが鳴った。酒に酔っても、きちんとセットした自分を褒めながら夏帆は重い瞼を開けた。
頭の奥に鉛を埋め込まれたような重だるさを感じながら一階に降りると、すでに父親が朝食の準備をしていた。
「おはよう。お父さん、珍しいね。早起きして朝食作りなんて」
「夏帆、昨日頼んだだろう。今日から朝食は三十分早めてくれって」
「えっ聞いてないよ?」
「おまえ、酒でも飲んでたのか? えらい深く眠って返事すらしなかったぞ」
「ううっ、そんな日だってあるよ……」
その場の居心地がわるく、夏帆はくるりと体を翻して洗面所に向かおうした。その夏帆の背中に向かって父親が言った。
「成瀬がいるからな」
ぼーってしていた夏帆は足を止めて、父の言葉を心中で復唱する。
『成瀬がいるからな?』
夏帆は重だるい頭を抱えた。そんなにひどい二日酔いでもないのに、聞き間違いがひどすぎる、と。寝にし成瀬のことを考えたけど、空耳がすぎるぞと一人笑った。
そして、ヨレヨレデロデロの”気合いだ”Tを着たまま、洗面所の扉を開けた。
そこには父親ではない誰かが、屈みながら洗顔していたのだ。夏帆は「ひゃっ」と驚いてしまった。その人はさっと洗い流しタオルで顔の雫を抑えながら振り向いた。
「おはようございます。体調は大丈夫ですか」
「えっ、えっ、誰?」
急に見知らぬ人物が現れて、夏帆の毛が逆立った。しかし、顔を覆っていたタオルが剥がされた時、それが誰か、はっきりと認識できた。
エリートヘリパイの成瀬、だと。
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