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夏帆は風呂場でブラシ片手に、バスを端から端まで丁寧に洗っていた。洗い終えるとシャワーで泡を流してゆく。夏帆は流れてゆく泡をみながら、頭の端っこで考え事をしていた。
夏帆は成瀬と対面するだけで胸のドキドキが止まらない。
でも、そのことが今の夏帆を悩ませた。
(亮介と別れて二か月。すぐに気になる人ができるって、私は軽いのかな)
もともと夏帆は惚れやすい性格ではない。どちらかといえば慎重だ。
しかし、そうと思ってはいたが亮介のときは良い面しか見えてなかった。
時間をかけないと人の内面まではわからない。成瀬だって人間だ。意外な一面を持っていてもおかしくはない。時間をかけて成瀬の人柄を知っていきたいのに、すでに自分は成瀬に好意を持っている。この思いをどう処理してよいものか、夏帆は悩んだ。
成瀬ほどの人物なら、夏帆に限らずどんな人でも気に入ってしまうだろう。現に父親も成瀬の人間性を気に入っていたからこそ、家に招き入れたのだ。
(成瀬さんを素敵な人だと思うのは、みんな同じ)
だったら、自分の気持ちを大事にしよう。この短期間で成瀬に好意を抱いていた夏帆は、そんな自分を素直に受け入れようと思った。
風呂場の掃除を終えると、夏帆は成瀬のために新調したお気に入り今治タオルを準備した。そして手のひらでフカフカ具合を確かめる。
「タオルもよし」
そして、本日の自分の寝巻をどうしようかと考えた。”気合い”だTシャツは、しばらくはお休みしてもらって、今日からはいよいよ眠っていたあのパジャマを着ようと決めた。
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