countdown 10

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それは夏帆が働く小湊幼稚園で起った。 自衛隊基地近くの釜伏山の麓にある歴史の長い小湊幼稚園。夏帆は短大を卒業してからずっとこの幼稚園で働いていた。 その日はいつも通り、帰りの会が終わりバス通園の子供たちをバスに乗せた。そして徒歩通園の送迎にくる親に対応していた時だった。 「こんにちはっ。夏帆先生っ」 と、夏帆の年長クラスの佐藤誠くんのママがご機嫌よく挨拶してきた。 このママはとても美人と評判で、バツイチながらも一人で誠くんを育てていた。そんな誠くんママがいつも違って、ウキウキな表情だった。夏帆は何気なく質問した。 「こんにちは。誠くんママ、なんだかとても幸せそう。何かあったんですか?」 「えーー。やっぱり顔に出てますか? 実は、ちょーカッコいい彼氏ができたんですよお」 「そうだったんですね、おめでとうございます!!」 誠くんを一人で育てる苦労も知っていたから、もしかしたら誠くんママを支える素敵な人と一緒になれるかも、と夏帆も嬉しかった。 「先週付き合いだしたばっかりなんだけどね。夏帆先生になら、みせてもいいかな」 と誠くんママは溢れそうになる笑顔を押し込め、スマホである写真を見せてくれた。 どれどれと夏帆は笑顔でスマホをのぞいた。 そこには、誠くんママがに肩を抱き寄せられて、頬をくっ付け合わせカメラ目線で写る二人がいた。 そのに見覚えがある夏帆は一瞬で真顔になった。 それはなぜかと言うと、 「じゃーんっ。彼氏の亮介でーすっ。薬局を何店舗も持ってて、経営者でもあるんですよお」 その彼氏というのが、夏帆の彼氏のはずの前原亮介だったからだ。
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