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ここはむつ市内にあるキャンプ場。
場内にはキャンプやBBQ施設などがあり、大きな池があるのが特徴だ。
朝の天気は晴れだった。
夏帆は成瀬の運転する車に同乗してきた。
「すごいきれいなキャンプ場ですね」
成瀬が広くて整備された敷地内を見渡し驚く。
「ここは休日になるとみなさん遊びにきますよ」
今日はここのバーベキューサイトで集合だった。
買った食材を持ちながら集合場所へと向かうとすでに、先輩家族はコンロをセッティングしていた。
「おはようございます」
「成瀬、夏帆さん! いらっしゃい」
同じく艦艇でパイロットとして働く先輩の白戸一尉が、二人をみて元気よく声をかけてくれた。
夏帆はちょこんと頭を下げる。
白戸は成瀬と同じく艦艇勤務の先輩パイロットだ。
朗らかで誰とでもフランクに交流でき、かつ仕事面ではシビアにも対応できる成瀬も一目置く先輩だ。
白戸は既婚者であり二児の男の子の父親でもあった。
「白戸さん。今日はお誘いいただきありがとうございます。こちらが井沢夏帆さんです」
成瀬は夏帆を白戸とその妻に紹介した。
「夏帆さん、よく来てくれたね。今日は一緒に楽しみましょう!で、こっちが私の妻の詩織です」
紹介された白戸の妻・詩織はボブヘアーの美しい上品な女性だった。
「こんにちは。成瀬さんとはサマフェスで会ったけど、夏帆さんは初めてね。よろしくね!」
詩織は見た目とは違って、はきはきと答えた。そのギャップがなんとも気持ちよい女性だ。
「こちらこそ、今日はよろしくお願いします」
夏帆も挨拶をしていると、白戸がマジマジと夏帆を見てきた。その横にいた詩織がつい『こらこら』と突っ込んだ。
「あの井沢さんの娘さんか。お父さんには似てないね。うん、美人だ」
白戸はそういってニタっと成瀬をみた。再び横にいた妻が『やめなさいって』と突っ込んだ。
そんな仲睦まじい夫婦をみて、夏帆もほっこりしてしまった。
「早速だけど、男チームは火おこし、女チームは炊事係りに分かれて作業を開始しよう」
白戸はそう言うと、くるりと後ろを振り向いた。後方には芝のグランドが広がっている。すでにそこで子供たちが遊んでいた。
「峻! 颯太!」
と白戸が子供たちの名前を呼んだ。広場から男の子とたちが勢いよく走ってきた。
「パパ―!やっとBBQ始めれるの?」
「肉ぅーー」
と、大はしゃぎだ。
「これから男チームは火起こしだ。薪に火をつけるぞ!」
「僕がやる!」
「颯太は下手だったじゃん。オレがやるよ」
火おこしは子供たちに大人気だった。
そんな流れるようなやり取りをみて、成瀬と夏帆はあっけにとられる。
そして、そのほほえましい光景に、互い顔を合わせ微笑んだ。
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