countdown 3

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「さあ、BBQを始めまーす」 白戸がトング片手に次々とお肉を焼いてゆく。たちまち、周囲に食欲をそそるいい匂いが立ち込めた。 「ママ。マシュマロ焼いていい?」 「颯太、早いって」 とお兄ちゃんの峻が颯太に突っ込みを入れる。 そんなやり取りを見てみんなで笑った。 (久しぶりに楽しい時間だな) 夏帆も成瀬もバーべキューを楽しんでいた。 そこへ白戸が成瀬に耳打ちをしに来た。成瀬はうんうんと頷くと席をそっと立った。 夏帆の気を向かせるために、詩織が夏帆に話かける。 「夏帆さん、お誕生日だったんでしょう?」 「いくつになったの?」 夏帆の隣のイスに座っていた峻が質問した。 「二十六になりました」 「二十代!若くていいなー」 詩織が目を丸くしてうらやましがる。 「ママも若いよ。十八歳くらいに見えるもん」 と峻が間髪入れずに詩織を褒めた。 「峻、気持ちはありがとう。ママ、本気で嬉しい」 男の子はママが好きなのだ。 夏帆は自分のクラスの園児たちを思い出し微笑んだ。 「夏帆さん」 と背後から成瀬に呼ばれた。 夏帆が振り向くと、そこには丸いケーキを両手に持った成瀬が立っていた。 「お誕生日おめでとう」 という成瀬の掛け声と同時に、詩織と子供たちがクラッカーを鳴らす。 「あっ、すごい…」 夏帆はこのサプライズに驚き、思わず椅子から立ち上がってしまった。 「成瀬がさ、夏帆さんのバースディの約束を守れなかったって船で泣いててさ。それなら一緒にお祝いをしようってなったんだ」 白戸さんがそう笑って教えてくれた。 成瀬は少し恥ずかしそうにする。 「泣いてはいないですよ。でも、みなさんでお祝いしてもらえるなら、夏帆さんも喜ぶと思って」 「…ものすごく嬉しいです。みなさん、ありがとうございます」 まさかのサプライズケーキに夏帆は嬉しくてたまらない。 「ケーキ食べたい!」 「みんなで食べよう」 そういって詩織がカットしてお皿に分けてくれた。 そのケーキを成瀬の隣で食べる夏帆。 「成瀬さん、こんな素敵なお祝い、ありがとうございます。本当に楽しくて嬉しくて、いい思い出になります」 「よかったです」 「白戸さんたちは、とても温かいご家族ですね。理想的な家族です」 と夏帆は穏やかな笑顔でしみじみと言った。 それを聞いた成瀬も嬉しかった。 「ええ、本当に」 成瀬も夏帆の楽しそうな姿を見れて、今日、ここに来てよかったと安心するのだった。
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