countdown 3

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夏帆の頭の中は、冷たくて重い霧がかかっていた。 白戸夫妻とのバーベキューが無事に終わり、今、成瀬と夏帆は湖の周りを歩いている。 さりげなく成瀬が夏帆の手をとって。 ゆっくりと並んで歩く。 二人ともに、言葉を発しない。 成瀬はこの沈黙にも違和感を覚えてはいなかった。 きっと夏帆も成瀬からの告白を待っているだろうと思っていた。 成瀬は明日から船の生活へと戻る。井沢家にお世話になるのは今日までだ。 つまり、明日で夏帆との同居は終了となる。 (告白するなら今日しかない) 成瀬はどう切り出そうかと頭をフル回転させていた。 意を決した成瀬は夏帆の前に立った。そして、夏帆のもう一つの手を取り、両手をしっかりと握った。 夏帆は少し驚いたが、空気は理解しているはずだ。何も言わなかった。 「夏帆さん、好きです。付き合ってください」 成瀬の告白は実にシンプルであった。しかし、それは飾りっけない、実直な性格を表していた。 「成瀬さん…」 夏帆の瞳が揺れる。 「たぶん、同居を始めたころから夏帆さんが好きだった。これからもずっと一緒に居てほしい」 成瀬は包み隠さず思いを伝える。 そんな成瀬を見て、夏帆の瞳に涙があふれる。 「…私もです。成瀬さんの制服姿を見た瞬間から、あなたに恋に落ちていました。そばにいるだけで毎日が幸せで…」 夏帆からの告白を聞くと、成瀬は嬉しそうに目を開いた。 「では…」 と成瀬の顔がぱあと明るくなる。 しかし、夏帆の顔をのぞきこむと一転、困惑した。 「夏帆さん?どうしました?」 夏帆は自覚がないまま涙を流していた。 それは、眉を下げて口を一文字に結んだ、苦しそうな涙。 「…ごめんなさい。自分でもどうしていいのか…わからなくて」 「なにかあったんですか?」 成瀬が心配そうに訊ねた。 夏帆は鼻をすすり上げて答えた。   「思い出してしまったんです。    母が日のことを」
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