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返事が出せずに一週間が過ぎようとしていた。
(成瀬さんを待つ一日はあんなに長かったのに…
答えが出ないまま、もう金曜日)
夏帆なりに頭の整理をしてきたが、時間はあっという間に過ぎ去り気が付けばウィークエンドだった。
「夏帆先生。お外で遊びたい」
誠くんがそうお願いしてきた。
「お外?雨はどうかな」
夏帆は天気を見るため窓から外をのぞいた。今日の天気は曇天だった。
季節は夏から秋に変っていた。むつ市は八月のお盆が過ぎると途端に気温が下がってくる。山おろしの風がぐんと冷えて、長袖が登場する時期だ。
そして、季節の変わり目の天候が乱れる日も多くなる。
「小雨が降ってるかな」
窓から手を出すと雨はまだ降ってはいなかった。
「よし。雨が降る前にお外で遊ぼうか」
「わーい! 今日はてつぼうやるぅー」
と誠くんは一番で遊び着を着込んだ。
「ヘリコプターが飛んでるー。かっこいいー」
誠くんが空に向かって指をさした。
夏帆はドキリと胸を鳴らして空を見上げた。
灰色の曇天の中を一台のヘリが北に向かって飛んでゆくのが見えた。
今はそれをみていると切なくなってしまう。
すると夏帆の頬にぽつぽつと雨粒が落ちて来た。
「雨だ」
夏帆は急いでみんなに声をかけた。
「雨が降ってきたから教室に入りますよー」
「はーい」
と元気な返事が返る。
「予報だと曇りだったのに、本格的に降ってきそう」
子供たちが使ったおもちゃを拾いながら夏帆は屋内へと向かう。
そして、なぜか気になった空に、もう一度視線を向けるのだった。
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