いっしょに食べよう晩ごはん

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「ハンバーグ、ハンバーグ!」 椅子の上に立ってはしゃぐ翔を、咲子がたしなめる。 「翔、座りなさい。会田さんはそちらにどうぞ」 ふたりの向かいの椅子に、耕三は腰掛ける。 炊きたてのご飯、煮込みハンバーグに味噌汁。 グラスには麦茶。 料理が並ぶ食卓に、3人は揃って手を合わせる。 「いただきます」 用意してもらった塗りの箸で、耕三はハンバーグをひとくち食べる。 「……うまい」 「ねー、おいしいでしょ?」 翔は誇らしげな笑顔を浮かべている。 「そうだな。おいしいな」 本当においしい。 ものすごく手の込んだ料理なわけじゃない。 けれど、誰かと一緒に食べるだけで、こんなにもおいしく感じられる。 「翔くんは、毎日ひとりで帰っているのですかな?」 「はい。放課後は小学校の敷地内にある学童保育で過ごして、18時にひとりで帰らせています。本当は、私が早く帰れればいいんですが……」 収入面を考えると、そうもいかないということだろう。 「実は私、今日で定年退職いたしまして、明日からどう過ごそうか思案していたところだったんです」 一日をもて余すよりも、なにか人の役に立てれば、少しは有意義な余生が送れるのではないだろうか? そんな気持ちで、耕三は咲子にこう切り出した。 「もしよろしければ、今日のように、咲子さんがお帰りになるまで、翔くんをうちでお預かりするというのは、いかがですか?」
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