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「翔が学童保育の夏祭りに、会田さんも来て欲しいと……。もしご都合がよろしければ、ご一緒しませんか?」
もちろん、耕三自身も翔の練習の成果を見てみたい。
そんな訳で、夏真っ盛りのある日の夕方、耕三は咲子と一緒に、小学校に来ていた。
なんでも、小学校の体育館で学童保育の夏祭りをやっていて、祭りのフィナーレを飾るのが、児童全員で披露するリズムけん玉らしい。
「よそのお宅でも、ご両親以外に祖父母も来るものなんでしょうか?」
「ええ。結構多いですよ」
「よかった。それなら、私も浮かなくて済みそうですな」
体育館の中は、すでに大勢の子どもたちとその家族、関係者で賑わっていた。
「こんにちは!水風船すくい、やっていきませんか?」
翔はお祭りブースのひとつで呼びこみをしていた。
相手が耕三と咲子でも言葉遣いを崩さず、一丁前の接客なのが、なかなかに微笑ましい。
「じゃあ、やっていこうかな」
隣の咲子を見ると、彼女も楽しげな笑みを浮かべていた。
終了まで他のブースもまわり、いよいよリズムけん玉の時間。
体育館の舞台に子どもたち全員が並ぶと、咲子も、他の保護者たちも、一斉にスマートフォンやビデオカメラを構えた。
ハイカラな曲にのせて、子どもたちがけん玉を披露する。
なるほど、リズムけん玉とはこういうものなのか。
真剣な表情の翔も、早いテンポに合わせているにも関わらず、玉を一度も落とさず“もしかめ”を続けた。
耕三が教えたとおり、手だけでなくきちんと膝を使っている。
「ありがとうございました!」
あれだけ一生懸命、練習したもんなあ。
リズムけん玉が終わり、深々とお辞儀した翔に、耕三は惜しみない拍手を送った。
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