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一番左奥の男性を見て、背が高く顔立ちが整っていて素敵だと思ったのはほんの数秒だった。
女性陣のお待たせしました〜の下りに表情1つ変えない無表情だったから。
確かに待たせしていたのかもしれない、でも愛想笑いの1つもできずに無表情で迎える彼を見て、まだ飲み会はこれからだというのに土田さんはないな〜と思った。
一同「カンパーイ♪〜」
小野田さんが自己紹介を促していく。
小野田さんは既婚で、優太さんと同期で研修を一緒に受けていく中で親しくなったようだ。
続いて、辛島田さんは東京から転勤してきて半年で革靴や革靴の手入れが好きと言っていた。
年齢は私より年下の28歳。
土田さんと辛島田さんの間に座るマサナリ君は、小さくて子供みたいな無邪気な29歳。
転職して大阪から来たというマサナリ君は関西弁で面白い。
ちょうど目の前にいたこともあり、私はこのコンパの間、マサナリ君とほぼ話していた。
料理が運ばれてくる度、マサナリ君が取分ける。マサナリ君が明るく、僕が取分けますー!と関西訛りで言うため、つい甘えてしまう女性陣。
有加さんが辛島田さんに「革靴とかすきなんだね」と話題を振った。
辛島田さんは、饒舌に話し始めた。
「土木のコンサルをしているけど、土木って汚いイメージがあると思うんです。そういうイメージを払拭したくて普段はスーツなんです。あと革靴の魅力に取り憑かれちゃって…あ、でも僕がこの話始めたら長いですよ?」と確認を求める。
有加さんも「確かに、オシャレだもんね、聞きたい」と返答し辛島田さんの話がまた始まる。
丸の内のオシャレな会社員をイメージしていること、憧れの人が居てその人から革靴の魅力を教えてもらったことなどを聞いた。
「〇〇〇〇ってブランドの革ってそんなに良い革ではないのに、なんで高いかわからない」辛島田さんがそう言った時、私はやめて!と心の中で叫んだ。有加さんの好きで集めているブランドだ。
その時、有加さんもテーブルの下で私の太ももを叩いて合図を送っている。
そんなことも知らずに辛島田さんは更に続ける。
「何でこんなに高いんですかって聞いても納得できなくて、結局二時間くらい店員さんと話していた」と言う辛島田さんの話に私と有加さんは失笑していた。
明るくムードメーカーなマサナリ君が「販売員から見てこういうお客さんってどうですか?」とこちらへ振った。
私はすかさず答えた。「いや、ないでしょう!無理無理!」もっと柔らかい表現を選択する方が好印象なのは私も理解しながらその選択を避けた。
開始から1時間が過ぎる頃には話し相手が決まってきていた。
有加さんは既婚の小野田さんとグルメの話。
私はマサナリ君と関西弁で会話をしてコントみたいになっていた。
ゆかちゃんは土田さんと話していた。
先ほどのハイブランドの下りで辛島田さんは話し相手を失い、途中で電話のため席を立っては着いてを繰り返していた。
辛島田さんが私に唐突に「年下ってどう思います?」と聞いてきたが、もう私の中に辛島田さんから良く思われたいという感情はない。
「年下とも付き合ったことはあるけど、あまり良い経験はない」と私はっきりと答えた。
辛島田さんは「もう、僕全然駄目じゃないすか」とお手上げの様子。
それに対してフォローすることもなく、それで結構だと思っている私がいる。
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