幸せへと続く道

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幸せへと続く道

 夏美が家に帰ると、母親が慌ただしく掃除をしていた。 『なぜ…?こんな夜時に…?』  今までにない、不思議な光景に、声をかけようとすると、 「夏美〜、ちょっと」 と、冬子の声がした。  冬子を探すと、二階へと向かう階段の途中で手招きしていた。  不思議に思いながらも、近づくと、手を引っ張られ、夏美の部屋へと連れて行かれた。 「なに?なに?お母さんも変なんだけど…」  夏美が冬子に問いかけると、 「気分も新たに気持ちも新たに、てね」  と、笑顔で答えが帰ってきた。 「え?」  と、意味が分からなくて聞き直すと、 「たまには気分も変えて、少し可愛くしてからご飯食べようよ。ほら、私もちょっといつもと違うでしょ」  そう言って、冬子が笑った。  よく見ると、いつもより少しデートっぽい。 「たまには、親にもこんな服も着られる大人になったんですよって、見せちゃおうよ」  と笑う冬子に、思わず笑ってしまった夏美だが、たくさん心配かけた両親が喜んでくれるかも…と思い、頷いた。  お化粧ももう一度し直して、夏美もホテルでディナーでもしそうな、淡いピンクのワンピースに着替えた。  リビングに向かうと、父親がソファで本を読んでいた。  夏美は不思議に思った。 『ここで本を読むなんて、珍しい…』  と。  父親は、寡黙な人で、リビングには、ほとんどいない。  いつも書斎に籠もっている。    「お父さんがここで本を読むなんて、珍しいね」  夏美が声をかけると、夏美をチラッと見てまた本を見ながら、 「あぁ…」  とだけ、返事が帰ってきた。  父親を不思議に思いながらも母親を探すと、キッチンでお茶の用意をしていた。 「あれ?夕飯は?」  夏美が気になって声をかけると、母親が慌てた様子で、 「え?夏美?やだ!冬子は?」  と、質問とは関係のない答えが返ってきた。 「え?お姉ちゃん?」  そう聞こうと声を出そうとしたら、玄関のチャイムが鳴った。  母親がホッとしたように、 「夏美、ちょっとあなた出てちょうだい」  と夏美に声をかけた。  いつもと違う家族に、不思議に思いながらも、玄関に向かい、玄関を開けると、そこには篤史が立っていた。  スーツ姿で花束と手土産を持っていた。 「…え?」  夏美がそう呟くと、篤史は笑顔で花束を渡してきた。  篤史が居ることに動揺した夏美は、思わず理由も分からないのに、花束を受け取ってしまった。  花束を見つめていると、篤史が夏美の頭に優しく触れた。  篤史の目を見つめる夏美。  そこに、 「来たなら、早く上がって」  と、冬子の声が聞こえた。 「よし、行くか」  そう言って、篤史は夏美の手を引きリビングへと入った。    
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