プロローグ

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「貴様のだだ漏れしている殺気(・・)とやらを押し込めるためのものだ」  アズマリアはちらりとガルンの胸元に目をやる。  そこには、かつてパリキスより授かったサクラメントの盾にはめ込まれていた、三つの勾玉を合わせたペンダントがある筈だ。  その効力によりガルンから放たれている虚理の殺意と呼ばれるものは、幾ばくか減衰している。  それでも、本気の殺意が混ざった殺気を放ち出すと、周りすべてを汚染するように殺意が伝播していく。  周りが敵だけならまだ良いが、これが街中だったと考えればぞっとする内容だ。  精神抵抗の低い子供や年寄りは、ガルンが街を徘徊するだけで死人が出るだろう。  今まではなるべく人混みのある場所は避けて旅を続けていた。  殺意もある状態ではなく、最悪気分が悪くなったり失神する人間がいる程度だったが、これから向かう場所は都心に近い。  今のガルンの精神状態で街には入れば、疫病が道を歩くようなものだ。  このままメルテシオンの城下町など入れる筈もない。  
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