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「了解した」
その叱咤激励をガルンは他人ごとのように聞いた。
頭で理解していても感情がそれに寄り添えない。
確かに大量殺人など望む事ではないが、感情の抑えが利くかは自信がない。
神妙な面持ちのガルンを見て、アズマリアは小さく舌打ちした。
「仕方がない。危険だが貴様に魔眼で条件付けをかける」
「魔眼?」
「強固な催眠術と思え。貴様の殺意は敵と認識した者にしか向かないように縛りをつける。ただ、これも完全ではない。それだけは肝に銘じておけ」
アズマリアの魔眼の類には良い思い出がない。
だが、背に腹は代えられない。
「あんたの魔眼を受けて気絶した覚えがあるんだか……大丈夫か?」
その言葉にアズマリアの美しい口元が引きつる。
「こっちは、その時に貴様の黒い炎で両腕を失ったんだがな~。覚えていないだろうな~?」
恨みと言うよりも殺意に近いモノを感じてガルンは苦笑いを浮かべた。
この吸血鬼には昔から世話になりっぱなしのようだ。
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