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「おま……!!」
思わず怒りの声を上げようとして、踏みとどまったのはアベルだ。
腐っても相手は王宮近衛騎士であり、王宮近衛騎士の位は各騎士団の団長と同格の権限がある。
序列で言えば一騎士であるアベルより五段階は上だ。
怒鳴りつけたい衝動を何とか理性がせき止める。
「ヴェイル殿、戦う前からその態度は無礼ではありませんか? せめて一合でも刃を合わせてから、暴言を吐いては如何か?」
射抜くようなアベルの視線を受けて、ヴェイルは露骨に面倒と言う表情を浮かべた。
「こっちは歴戦の勇者様の腕前を見たいんだよ。彼の冥魔大戦の英雄の実力とやらをね。大戦じゃ、王宮近衛騎士団に天翼騎士団。それどころかカシアジイーネの六征やラ・フランカの吸血鬼殲滅機関のメンバーも一部参加してたらしいじゃないか? それでも、他の連中は全員くたばった。それほどの地獄を生き残ったのはあんただけだ」
獲物を刈るハンターのような冷ややかな視線を受けて、ガルンは思わずほうと呟いた。
目の前の青年は伊達や酔狂で立ち会いを求めている分けでは無さそうだ。
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