プロローグ

3/15
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
 彼の殺気のみでは死なず、恐れを感じないためだ。  二つ目は単純に吸血馬は吸血鬼以外を背に乗せることは無く、人間など振り落として踏みつぶすところだが、 搭乗者の鬼気迫る殺気が吸血馬の脳すら震え上がらせ、指示を聞く状態に陥った為である。  恐れを感じないはずの吸血種だが、本来忘却した恐怖と言う感情が正常な思考能力を奪う。  その二つの偶然が嚙み合って現状の疾走を可能としているのだ。  騎馬二頭は一頭をペースメーカーに、ぴったりと背後にもう1頭が付き従う。  先頭の騎馬に乗る白い外套に身を包んだ銀髪の少女は、チラリと背後の馬に乗る黒づくめの青年に視線を送る。  背後の青年はその視線に気づいて、馬を並走させる位置まで押し上げた。 「このフエキドウ林道の少し先に無人の休息所がある。そこで一旦休憩するぞ」 「休憩は必要ない。吸血馬は疲労がないのだろう?」 「先に色々と話がある。それに、もう少し先に進めば最接近のメレリオンの町がある。今の貴様をそのまま進ませる分けにはいかんからな」 
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!