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ガルンは先に動く選択をした。
相手は王宮近衛騎士団なので、純粋な剣術だけならば手加減無用と判断する。
腕の一本か二本は落としても、メルテシオンには優秀な治癒術師がいるので完治できる筈だ。
縮地のような踏み込みから、一瞬で剣の間合いに飛び込む。
刀は振り上げ済みであり、そこから強烈な袈裟斬りの一撃を放つ。
しかし、その一撃はヴェイルが手にした白い光に阻まれていた。
何時それを抜きはなったのか?
白い光に見えたものは、一見ただの包帯であった。
腕の巻かれていたそれを、一瞬で引き抜いて一撃を防いだのだ。
「はあ?」
呆気に取られた一言を漏らしたのはアベルである。
ガルンの強烈な一撃を包帯で受け止めると言うのは、ある意味珍事と言えよう。
(包帯では……ないな)
ガルンは奇妙な手応えに意識を巡らせる。
包帯ーー布ならではの伸縮のような柔かさを感じない。
「はいよ!」
一撃を受け止めたヴェイルは、包帯を引きながら身体を捻る。
剣戟を受け流しながら回転して回し蹴りを放つ動きは、明らかに格闘家のそれだ。
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