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爆風の余波が唖然として見ていたアベルの頬を叩く。
ほぼ予備動作無しでこのような爆発を行える術式は限られる。
少し遠目から見ていたアベルからは、一瞬待っていた紙吹雪など攻撃動作として捉えようがない。
「呪符か……」
そうボソリと呟いたのは、爆発した後に舞った土煙の中からだった。
ヴェイルの顔が歓喜に震える。
土埃を突き抜けて現れた水の刃を、壁を縫うように移動しながらかわす。
あの間合い、あのタイミングで攻撃を防いで反撃してくるとは。
壁に当たった水刃は綺麗に霧散し、煙を抜けてガルンの姿が現れても特に驚く事もない。
ヴェイルは地面に降り立つと舌なめずりした。
(水刃攻撃を考えると、俺の空雷は妖刀の水の膜が何かで防ぎ、そのまま膜状の水を攻撃に転嫁したってところか?)
土埃による死角からの攻撃も的確であり、完全に直撃コースである。
まるで全て見えているかのような攻撃だ。
ガルンが刀を一振りすると、立ち上っていた土埃が一瞬で消し飛ぶ。
英雄と呼ばれた剣士の実力の片鱗に触れて、ヴェイルは笑いがこみ上げてきた。
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