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「やるな~。これが冥魔大戦の英雄か。試験で戦った王宮近衛騎士より、やはり格上だ」
壁に突き刺さっていた包帯を抜いて地面に降り立つと、今度は半身で腰を落として構えをとる。
ガルンは剣を下げたままで、構えをとる気はないようだ。
今度はそちらから仕掛けてこいと言う意思表示であろう。
「なっ、何をやっているんだあなたは?!」
二人の間に荒げた声を放ったのはアベルである。
激昂する声に戦いの腰を折られた二人は、ゆったりとそちらに目を向ける。
「こんな夕闇時に爆発を起こしたら、直ぐに警邏隊がやってきますよ! 何のための秘匿任務だと思っているんですか!! 早くこの場を離れなければ」
ひとりで慌ただしいアベルを見て、ヴェイルは深い溜め息を吐いた。
「いやいや、あんたこそ五月蠅いんたが。まあ、俺の張った空間結界内部だから、幾ら騒いでも平気ですがね」
冷ややかな視線を受けて、アベルはガルンに顔を向ける。
ガルンは無言で指を路地裏の入口付近の壁に向ける。
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