プロローグ

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 夜の闇に紛れて、やたらと鳥らしき鳴き声と何かが落ちる音がする。  それは、夜目が聞かない鳥達の断末魔の落下であった。  少年から放たれる殺気を受けて、逃げ出すもの、ショック死するものと様々だが、木々に当たらずに空に逃げ出せた鳥は少ない。 「ガルン。お前は先ず、その垂れ流している殺気を抑えろ。このまま町にいったら死人が出るぞ」  少女の真摯な訴えで、ようやくガルンは無意識に発している殺気の強さを思い出した。 「……了解した」  渋々従う事にしたガルンを、銀髪の少女アズマリアは珍しく憐憫な(まなこ)を向けた。  戦いの果てに得た力は、圧倒的な殺傷能力の代わりに平穏な生活を捨て去った結果に見える。  今後、彼には人として生きる事の方が遥かに難易度の高い作業になることだろう。 「とにかく第二王子サランディード・アルグ・メルテシオン様の目的は不明だが、パリキス姫を攫った以上直ぐにどうこうする気は無いはずだ。身体を焼却するなどする気ならば、シュバルツェン・パシェッエンで十分行えていた。それをしなかったのは、何かしらの利用価値を見いだしているからに他ならない」      
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