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「滅陽神流剣法・無式弐型袈裟斬り」
振り下ろされた刀は、防御した紙の盾を意図も容易く切断した。
まるで水面に刃先を入れただけのような滑らかさで、切っ先はヴェイルの喉元で止まる。
制止した刀が届いていたのか、首筋に薄皮一枚切れたような傷が浮き上がった。
「取りあえず一本と言ったところか?」
ガルンの言葉に、ヴェイルはゆっくり後退しながら首を縦に振った。
最後の一刀までの動きが、今までとは別次元だ。
的確に位置を把握し、踏み込んだ速さも今まで戦ったどの剣士よりも速く、打ち込まれた一刀は能力で強化した妖紙を呆気なく切断してのけた。
ガルンが戦った相手の中で、中の上と言う位置付けに腹を立てるより、己のレベルが未だ中央値でしかない事に
世界の広さを感じる。
「負けた負けた! 流石ですよ英雄殿。でも不可解なことが二つありますよ。答えを貰えますか?」
ヴェイルはやけくそ気味にその場に座り込むと、足元に落ちていた紙を拾い上げた。
ガルンに綺麗に切断された紙である。
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