1.無題

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1.無題

「っ!?」 急に意識が戻る。何故か俺はスコップを握ってた。目の前には深い穴。 「おい、何ボーッとしてるんだ。早く埋めるぞ」 声をかけてきたのは知らない男。俺と同じくスコップを持っていて土を穴に放り込んでいた。 「それにしてもまさかお前と人を埋める日が来ようとはな」 男は笑っていたが俺は苦笑いを返すことしか出来なかった。 (何を埋めてるだって?なんでこんなことになっているんだ) 分からないことばかりで頭が混乱していた。とりあえずなにか分かるだろうと俺は穴の中をそーっと覗いてみた。もう顔全体は土で埋まっているが、四肢はまだ確認することが出来た。俺はさらに目を凝らす。そして気づく。 (あのネックレス…!) まだ埋まっていない右手には見覚えのあるネックレスが掴まれていた。あれは俺が彼女に誕生日プレゼントとしてあげたものだ。俺は慌てて穴に入り、その手を握った。なんだかその手はゴツゴツしていてまるで男のようだった。 「どうした?もしかして未練でもあるのか?」男がニヤニヤしながら話しかけてくる。「しっかし邪魔だから殺したいとかお前は本当に怖い女だな」 男はそのままタバコ吸ってくるといい車の方へ歩いていった。 俺は恐る恐る顔が埋まってるであろう場所の土を払った。その瞬間寒気が全身に流れる。 そこにあったのは苦しみに歪む自分自身の顔だった。
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