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学校へ続く道を歩いていくと、だんだん同じ制服を着た生徒の姿が視界に増えてきた。紺の学ランとブレザー、白いワイシャツのはっきりとした色の中へ、真琴は次第に紛れ込んでいく。
矢継ぎ早な挨拶に他愛のない会話、飛び交う笑い声。どれも自分には、縁のないものだ。
集団に紛れながら正門を通り、校内に入る。靴を履き替えて教室まで歩き、窓際の最後方である自分の机の上に荷物を置いた。座ると同時にうつ伏せ、周囲の人間を視界から消す。
自分に関わろうとしてくる人間は、このクラスにはいない。学校では敬遠されがちな存在だった。
突然机が激しく揺れ、真琴は思わず顔を上げた。白い蛍光灯に目を細めていると、数人の男子が気まずそうな顔でこちらを見ているのと目が合った。机にぶつかってきたのは彼らだろう。
謝罪の一言もなく、彼らは真琴に背を向けて立ち去った。
「あいつ、ほんとよくわかんねえよ」
「な。いつも喋んないし、しかも姉があれだもんな」
「大学受験落ちたんだって?いい気味じゃねえの」
ひそひそとささやかれる噂は、どこから漏れ出た真実なのか。出処を突き止めるのは困難に違いなかった。
どこに行こうとも、人の悪口ばかり聞こえてくる。誹謗も中傷も、もう十分だというのに。
始業のチャイムが鳴る。一斉に鳴り響く机や椅子を引く音、席へ戻っていく足音の中に溶け込ませるように、真琴は、数少ない昔の記憶を思い出していた。
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