2:斎藤 真琴

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 甲高い笑い声で、真琴は目を覚ました。重い頭をもたげて周囲をぼんやりと見渡す。同級生は立ち上がり、友人らのもとへ赴いて雑談や談笑に興じている。  時計に目をやると、既に時刻は12時をまわっていた。4時間目が終わり、昼食の時間になっていた。  身を縮めて教室の後方のドアを抜け、水道の隅で手を洗う。また肩を狭めて自分の席へ戻り、すとんと座り込んだ。  傍らのリュックから、行きのコンビニで買った期間限定のかき氷ブルーハワイ風味おにぎりを取り出す。コンビニで昼食を買うことが多すぎて、最近はこうして期間限定の商品にでも珍味を求めなければいけないほどに、飽きがきていた。  前の席の女子たちが、机をくっつけてその上に弁当箱を置き、食べながら楽しげに話している。窓際の方では他クラスから来た男子が、椅子の向きを変えて向かい合いながら、笑い声を上げていた。  ああいった人の輪の中に自分が入っていくことは、これからもないだろう。いや、入らない。自分のことは自分で決めたい、真琴はそう思った。  他人に振り回されるのはまっぴらだった。  おにぎりの真ん中に包まれていた青いクリームが、口の中で弾けた。
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