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床をスマホで照らすと、すぐに、正方形に切れ込みを入れたような痕跡を見つけた。
床下の収納所へ続く入り口がこの下にあるということを、彼は知っていた。スマホを消してポケットに突っ込むと、重い扉の取っ手に手をかけ、力ずくで引き上げる。埃が舞い、やがてゆっくりと、それは姿を現した。
闇が、ばっくりとその大きな口を開けていた。大人一人が余裕で飛び込めるほどの狭さで、四角い昇り口が垂直に伸びている。
どこまで続いているのだうか。昇降用の古い梯子は、奥深くまで無限に伸びているようにも感じられた。
息を潜めて、その入り口に足を踏み入れる。梯子の一段目に恐る恐る足をのせた。体重をかけた瞬間に甲高く軋み、真琴の心臓は早鐘を打ち始めた。
時間はあまりない。真琴は数段梯子を降りると、両手で踏ざんを掴み、ロッククライミングの要領で降りていった。
やがて、埃臭い空気が体を包み始めた。足の裏が地面に付き、地下室に到達したことを理解した。
振り向いたとき、目の前にあるのは暗闇だけだ。しかし手探りで宙をまさぐれば、大きな古い扉と、ドアノブの存在くらいはわかる。
再びスマホをつけ、片手でドアを押し開けると、同時に中を照らし出した。
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