4:姉の願い事

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 地下室は、広い物置として活用されているようだった。  着古したセーターに破れた手袋、濡れた紙袋、大量の不要書類。  押し入れに押し込むには古すぎて、捨てるには多すぎるがらくたが、空いた空間を埋めるようにところ狭しと詰め込まれていた。  だが、真琴にはわかっていた。この大量の物は全て、本当に保管したい物を隠すためのカモフラージュなのだということを。  昔に一度だけ、両親がこの地下室へ続く扉を開けているのを目撃した。恐らくここに仕舞うのであろう物を、隠すようにして手に持っていたのも。  その、持っていた物というのが── 「あった」  透明なガラス瓶だ。中には透明な液体が入っている。スマホの光にかざしてみると、光の反射のせいか、時折明るい空色が浮かび上がった。  これだ。人の脳に影響し、海馬へ多大な悪影響を与える劇薬。昔、自分が見たガラス瓶の中に、この液体が入っていた。 「俺の昔の記憶が薄いのも、これを──」  ささやくと、真琴はガラス瓶を目元まで持ち上げた。  この薬を飲めば、姉は死ぬ。斎藤 利帆という人格ごとなくなってしまう。  なぜ、そんな物がこの家にあるのか。  ──4年前、父がネットで秘密裏に入手したから。  なぜ、そんな違法にも等しいことをしたのか。  ──そうするべきだったから。  なぜ。  ──そうしなければ、やがては取り返しのつかない事件が起こるであろうことが、分かっていたから。 
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