竜の涙

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「で、これは一体どういうことなの?」 アクアは苔むした倒木に腰掛ける。 「薬草を探しに森の中を歩いていたら ルーがいてさ、意気投合して話してたら 疲れて寝ちゃってたみたいなんだ」 アクアはノアののほほんとした口調にイラッとくる。 大体、ドラゴンと意気投合するってどういうことだ。 「ドラゴンはとても凶暴なのよ!!  もし襲われでもしたらどうするつもり?!」 「このサイズだとまだ子どもの ドラゴンでしょ?大丈夫だよ」 ノアがけらけら笑う。 まったく、能天気なんだから!! 「お父さんとお母さんも心配してたのよ!! ひとりで森に行くなんてダメじゃない!!」 アクアが声を上げるとノアとルーは 身体をビクッと震わせた。 ノアは申し訳なさそうに眉を八の字にする。 「ごめん、アクア」 落ち込んだ声を出すノア。 反省はしているようだ。 ルーも居心地悪そうに俯いていた。 「でも、お父さんの病気を治すには『竜の涙』が 必要で!!」 「でも『竜の涙』 は希少なものなのよ。そう簡単に見つからないわ」 アクアたちが話している『竜の涙』とは ドラゴンが零した涙から生えてくるという伝説の 薬草である。 「だから、ルーに協力してもらおっかなって」 ノアがルーの肩(?)に手を置き、 キラキラした瞳をした。 ルーも嬉しそうに「ルー!!」と鳴いた。 アクアは呆れてため息をつく。 泣こうと思って泣けるわけがない。 ドラゴンも人間と一緒で余程の感動や 悲しみを経験しなければ涙を流さない。 「あのね、泣こうと思って泣けるわけがないでしょ。 諦めて家に帰るわよ」 アクアは立ち上がりノアの手を引いた。 しかしノアは立ち上がらない。 「嫌だ……」 ノアは俯き小さく言う。 ルーが心配そうにノアを見上げる。 「ノアっ!!」 いい加減にしろ!!と怒ろうとしたが ノアに遮られる。 「だって、『竜の涙』が無かったら、 お父さん死んじゃうんだよ?  アクアはそれでも良いの?」 涙目で見つめられる。 アクアは言葉に詰まった。 ノアも父のためを思って薬草を探しにきたのだ。 アクアも父を助けたいと思っている。 このまま帰ればもうチャンスは ないかもしれない。 ルーは優しい性格だ。 その辺のドラゴンとは違うのは分かる。 わたしたちに協力してくれるかもしれない。 だけどどうやって、ルーを泣かせるの? それに父と母も心配している。 アクアは頭を抱えた。 「どうやって泣かせるのよ。 それに早く家に帰らないと……」 「アクア、お父さんが死ぬのと、お父さんの病気が治るのどっちがいい?」 「そんなの、お父さんの病気が 治る方に決まってるでしょっ!」 勢いよく言うとノアはにっこり笑う。 「なら、わたしに協力してくれるよね?」 アクアは一体何をするつもりなんだと不安げな表情でノアを見つめた。
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