悲劇

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翌日、アクアは何か 温かいものを抱きしめて寝ていることに気づいた。 「?」 アクアは寝ぼけながらそれを触る。 温かい。 肌触りは亀の甲羅のように硬いがツルツルしている。 ん?ツルツル? ガバッと起き上がる。 ルーの綺麗な瞳と目が合った。 どうやら、アクアはルーを 抱きしめて寝ていたようだ。 どうしよう。あの後うっかり寝てしまったみたいだ。 焦るアクアをよそに ノアはルーの太い尻尾を枕に寝息を立てていた。 そして気づく。 「もしかして、 わたしたちが起きるまで待ってたの?」 ルーは何も言わない。 だがその瞳は慈愛に満ちていた。 「ルー……。あなたは本当にやさしいのね」 アクアはルーに近づき頭を撫でた。 「ルールルー」 嬉しそうに鳴くルーに笑みがこぼれた。 可愛いわね。 「んー」 ノアが寝返りを打ち目をこすった。 「おはよ、アクア、ルー」 「おはよう、ノア。今日こそは 『竜の涙』を手に入れるわよ」 アクアはそう意気込み腰に手を当てた。 「いたぞ! ドラゴンだ!!」 突然森の中に野太い男の声が響いた。 一体なにごとかと アクアたちは声のした方を見る。 そこには武装した男を筆頭に三人の男たちがいた。 危険を感じた アクアはルーを守るため、前に出て腕を広げる。 ノアも警戒するようにルーに寄り添う。 「この子に何をするつもりですか」 アクアが武装した男を軽く睨む。 「お嬢ちゃん、まさかその ドラゴンを守ろうと......?! 危険だ。すぐに こっちへ!」 武装した男は緊迫した表情で こっちへ来いと合図する。 「ルーは優しいドラゴンです!!襲われたこと なんて一回もないわ!!」 それに襲われていたら今頃、傷だらけになっているか 既にルーの腹の中だ。 「そうだよ! ルーは何もしてない! それなのに殺そうとするの?」 ノアが応戦する。 「ドラゴンは気性が荒い!親しくなったところで、襲うこともある! だから早く!!」 イラッとした。 ルーは襲わないと 言ってるのに何度言えば分かるの! ルーが男たちの元へ歩いていく。 「あっ! ルー!」 ノアが制止するが、ルーは歩みを止めない。 「う、うわぁぁぁっ!! く、来るなっ!!」 仲間のひとりが慌てふためき剣を振り回す。 その瞬間剣が深くルーの胸に沈みこんだ。 そんな、嘘。 「「ルー!!!」」 アクアとノアはルーに駆け寄る。 ルーの体はゆっくりと傾き、 地面に勢いよく倒れ込んだ。 バタン。 ルーの胸からは大量の血が流れている。 最初は、父の病を治すためだった。 でも、今はルーに死んで欲しくない。 三人には絆が芽生え始めていた。 ルー、お願いよ。死なないで。 アクアは涙を一筋零した。
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