竜の涙

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竜の涙

森の中にひとつの家がありました。 「「お父さん、大丈夫??」」 声を揃えて言う二人の少女は瓜二つだ。 心配そうな顔をする 水色の長い髪を耳の横でゆるく結い エメラルドの垂れ目の少女。歳は十三歳。 もう一人は垂れ目の少女と同じ色を纏っているが 髪はショートカットで気が強そうな瞳をしていた。 彼女たちは双子である。 垂れ目がの少女がアクア。 ショートカットの少女はノアという。 彼女たちの父親はドラゴンに負わされた傷に よって、病気を発症し寝たきりになっていた。 ベッドで寝ている灰色の髪をした痩せ細った男は 娘たちに心配をかけまいと笑って見せた。 彼こそがアクアとノアの父親であるグレンである。 「あぁ。大丈夫だよアクア、ノア」 助かるには、薬が必要だ。 けれどアクアたち一家は庶民。 高価な薬を買えるはずもなかった。 「お父さん、今お母さんが 薬草取りに行ってるからね」 アクアが涙目で言う。 「お父さんはゆっくり寝てて」 ノアも優しく微笑んだ。 「すまないな、俺が病気になっていなければ……」 グレンが激しく咳き込む。 「「お父さん!!」」 「あぁ、大丈夫だ。ゲホッ」 辛そうな父の様子にアクアは胸が苦しくなった。  「ただいま」 振り向くと水色の髪を後ろで まとめた女が立っていた。 瞳は深い青色だ。 服は土で汚れていて、顔にも汚れがついていた。 「お母さん! 薬草は?」 アクアが籠の中を覗きこむ。 しかし、目当ての薬草は見当たらなかった。 「ごめんね、今日も見つからなかったの」 夫と娘に申し訳なく思いながら眉を八の字にする。 彼女の名前はマリン。 グレンの妻で双子の母親だ。 それもそのはず。 その薬草は伝説になっているほどの希少な薬だった。 早々見つかるはずがない。 「そんな」 ノアが泣きそうな顔をする。 「このままじゃ、お父さんが死んじゃうよ! わたしが薬草を取りに行く!」 出て行こうとするノアをマリンが止めた。 「ダメよ、ノア。森には魔物がたくさんいるのよ」 魔物は、動物とは違い、 大きな体と魔力を持っている 凶暴な生き物のことだ。 襲われたら一溜りもない。 グレンが襲われたのはドラゴンという魔物である。 「でも、このままじゃお父さんが!!」 「ノア、落ち着いて。お母さんの言う通りよ。」 冷静に言うアクアにノアは渋々頷いた。 だが、その翌日 ノアは家にいなかった。
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