315人が本棚に入れています
本棚に追加
相手の男の濁った目が揺らぐ。
「どうしてだと? それは、自分の胸に聞いてみるべきだろう」
何を言われているのか、さっぱりわからなかった。
「忘れたとは言わせない」
「忘れるもなにも、本当に、何のことか……」
「黙れっ!」
怒鳴り声を発した男の身体に、黒いもやがまとわりついているのが視えた。
この人、悪い霊に取り憑かれている。
「おまえが学校で娘をいじめ、自殺に追いやった張本人だろ!」
「自殺?」
「娘は学校でいじめられていた。あの日も、同級生に呼び出された娘は、陰湿ないじめを受け水をかけられた。娘は泣きながら学校を飛び出し……交差点で車にはねられた」
菜月は唇を震わせた。
「あなたは、藤白桜花さんの」
「父親だ」
最初のコメントを投稿しよう!