4 菜月、幽体離脱を試みる

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 相手の男の濁った目が揺らぐ。 「どうしてだと? それは、自分の胸に聞いてみるべきだろう」  何を言われているのか、さっぱりわからなかった。 「忘れたとは言わせない」 「忘れるもなにも、本当に、何のことか……」 「黙れっ!」  怒鳴り声を発した男の身体に、黒いもやがまとわりついているのが視えた。  この人、悪い霊に取り憑かれている。 「おまえが学校で娘をいじめ、自殺に追いやった張本人だろ!」 「自殺?」 「娘は学校でいじめられていた。あの日も、同級生に呼び出された娘は、陰湿ないじめを受け水をかけられた。娘は泣きながら学校を飛び出し……交差点で車にはねられた」  菜月は唇を震わせた。 「あなたは、藤白桜花さんの」 「父親だ」
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