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不審者――藤白は低い声で言う。
「おまえが娘をいじめた山城まどかだな!」
「え? ち、違います! 私は山城まどかじゃないです!」
どうして私のことを山城まどかだと勘違いしているのだろう。
何がなんだかわからず、菜月の頭は混乱した。
「嘘を言うな! さっき、スマホにかかってきた電話に出た時に、名乗ったではないか! 山城まどかだと」
菜月は息を飲む。
そう、確かに言った。
交差点で立ち止まり、まどかのスマホに電話がかかってきて。
『はい、山城まどか』
のスマホです、と――答えた。
そして、すぐ側にいつも座り込んでいる不審者の姿もいた。
電話の相手は、暎子の言った通り本人からだった。
スマホは暎子に頼んで返した。
だが、藤白は勘違いをしている。
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