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「妻を亡くした僕は桜花を大切に育ててきた。僕にとって桜花はすべてだった。宝ものだ。桜花があんな目にあってから、僕は何もかもやる気を失い、今ではこんな有様だ。僕は桜花をいじめた奴が誰なのか知りたいと思った。だが、学校に問い詰めても教えてくれない。それどころか、そんないじめはないと言い張った。だが、ようやく、娘をいじめた人物が山城まどかという名前だと知った。そのことを学校に言っても、まったく取り合ってくれない。だったら、自分で探すしかない。そう思い、僕は桜花が事故にあったあの交差点で、ずっと座り込みながら探し続けた。そして、ようやく見つけた」
菜月は慌てて首を振った。
「待って、私の話を聞いてください。私、山城まどかじゃないです」
「逃れようと思って嘘をついても、無駄だ!」
菜月の顔が青ざめる。
藤白の手には、いつの間にかナイフが握られていたからだ。
「娘をあんな目にあわせたおまえを許さない」
「やめて……本当に違うの!」
いくら違うと否定しても、藤白は菜月の言葉を聞こうとはしない。
このままでは殺される。
どうすれば……。
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