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「ここは悪霊のたまり場かよ!」
咄嗟に、翔流は数珠を持った手を合わせ、何かを唱えると、散れ! と声を放ち数珠で空気を裂いた。
征樹は靴のまま部屋の中へと飛び込み、藤白を殴り飛ばす。
「俺の菜月から離れろ!」
蹴られた勢いで藤白の身体が後方の壁まで飛び、そのまま崩れるように落ちる。
ぐったりした藤白の口から、黒いもやが吐き出された。
力なく座り込む藤白の胸ぐらを掴み、征樹はさらにこぶしを振り上げた。
「パパ、だめ! その人、藤白桜花さんのお父さんなの!」
菜月の声に、征樹は振り上げた手を虚空で止めた。
「そうなのか?」
藤白はうなずく。
征樹に殴られ唇を切ったようだ。
口の端に血が滲んでいた。
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