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「とにかく、間に合ってよかった。立てる?」
翔流に支えられ、菜月は身を起こした。
遠くから、パトカーのサイレンが聞こえてくる。
「詳しい話は署で聞こう」
うなだれている藤白の腕を征樹は取り立たせる。
去り際、藤白は菜月に向かって頭を下げた。
「勘違いをしたあげく、本当に申し訳ないことをした……いや、謝って済むことではないけれど……本当にすまない」
気落ちした声で言う藤白に、菜月はいいえ、と首を振る。
亡くなった桜花のことを思うと、彼を責める気にはとうていなれない。
パトカーが到着し、数名の警察官がやってきた。
「藤白の身柄はこちらにお任せください。神埜さんはお嬢さんの側についてあげてください」
警察官の言葉に、いや、と言って征樹は翔流をかえりみる。
「菜月のことを、頼んでもいいだろうか」
征樹の頼みに翔流は深く、そしてしっかりとうなずいた。
「任せてください」
「パパ、助けに来てくれてありがとう」
征樹の元に駆け寄った菜月は、ぎゅっとしがみつく。
征樹は切なそうな表情を浮かべ、菜月の頭をなでた。
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