0人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなある日、いつも通り父が酔ったまま出掛けた。蛟は今日も父の帰宅を待つ筈だった。
しかしその日は来客があった。
客人は近所に住む、幼なじみの神威。
彼女は二つ年上で、まるで弟のように蛟を可愛がり、幼い頃はよく遊んだ仲だった。
蛟の母が生きていた頃までそれは続いていたが、蛟の父が荒れ始めてからは疎遠となっていた。
それも蛟の父のせいだった。
父は神威を見るや否や突然の怒声を浴びせ追い返したのだ。
それを皮切りに、村中の皆が蛟の家庭を避けるようになった。
神威の両親も例に漏れず、娘に「もうあの家庭には関わるな」と釘を刺す程に距離を置いてしまった。
だが神威だけは蛟が心配で仕方がなかった。
蛟の姿を見掛けなくなり、噂ばかりが飛び交う現状に居ても立ってもいられなくなった神威は親の目を盗み、蛟の父が出掛けた所を見計らって蛟の元へ向かったのだった。
突然の事に驚いている蛟をよそに神威は自身が作った弁当を蛟に差し出す。噂によると蛟はろくに食事も摂れていない筈。
その噂通り蛟は飢餓状態だった。蛟は無我夢中でそれを平らげ、そして神威に泣きついた。
最初のコメントを投稿しよう!