六章 虹色ミサンガ

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* * * *  オーエン堂の窓にはりついていた美晴と勝利は、窓の外の梨々香と悠介が笑顔ではなしているのを見て、安心したようにイスに腰を下ろした。 「なんかリリー、この一週間ですごく変わった気がするよな。もちろんバリーもだけど」  昨日の今日なのに、違和感なく名前を呼ぶ勝利に、美晴は照れくささを隠せない。眉間に皺を寄せて、両手で頭を抱えてしまう。  それに気づいてか、勝利はニヤニヤしながら、 「なぁ、バリー。どうした、バリー。返事がないぞ、バリー」 と繰り返す。 「あぁ! もうわかったってば! 何回も言うの、やめてよ!」  大爆笑し続ける勝利にイライラしていると、近くを通ったトミーパパが何かを思い出したように立ち止まる。 「そうだ、バリー。今日クロスステッチの小物入れが一つ売れたよ」 「本当? やったね!」 「えっ、ここでも何か売ってるの?」  美晴がガッツポーズをすると、勝利が食いついてくる。 「そうだよ。あれっ、入口の横のコーナー見てない?」 「見たけど、バリーのもあったなんて知らなかった。まじか」 「良かったら、勝利くんのも置くかい?」 「えっ、いいんですか⁈」 「もちろん」  その時店のドアが開き、梨々香が二人の元へ戻ってきた。その表情を見れば、きちんとお礼を伝え、お守り袋も渡せたのだとわかる。 「二人とも、ありがとう。ちゃんと言えたよ!」 「うん、良かったね」 「悠介、喜んでた?」  勝利の質問に、梨々香が照れたように下を向いたものだから、聞かなくても答えがわかった。 「あのね、二人に渡したいものがあって……」  梨々香はショルダーバッグの中から何かを取り出すと、 「二人とも、手を出してくれる?」 と言って笑顔を見せる。  美晴と勝利は顔を見合わせ手てから、右手を差し出した。梨々香はにこにこしながら、二人の手にミサンガを結ぶ。 「これは?」  それは青と緑と黄色の刺繍糸を三つ編みに編んだミサンガで、梨々香の腕にも結ばれていた。 「家にあった占いの本に書いてあったの。友情が深まるミサンガなんだって。だからみんなで持っていたいなって思って……。ほら私、あまり手芸が得意じゃないし、これくらいしか出来ないんだけど」 「嬉しい。ありがとう」 「みんなってことはもしかして……」 「実は、関根くんに渡したお守り袋のリボンの部分に使ってる」 「あはは! まぁいいんじゃない? でも俺たちがつけてたら驚くだろうな」 「その時は……ショ、ショーリーが伝えればいいでしょ?」 「おっ、やっと言った」 「うるさい」  オーエン堂に三人の笑い声が響き渡る。その笑顔はきらきらとした希望にあふれていた。
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