27人が本棚に入れています
本棚に追加
ちょうど持っているランドセルにつける事ができた。
その名札は少し泥が混入していて、名前が何か読み取る事はできなかった。しかし、手に取った名札を眺めているうちに路地の終わりかと思われていた壁はなくなっていた。何か落ちているものを拾ったりしたら、
この路地は再び終わりを再構築することになるのか?それについて詳しくは分からない。さすがに二階も同じ状況を作られてしまったのなら
三度目の正直といわんばかりの行動を起こして、
この原因を突き止めて出口が
永遠と見つからない迷路とはおさらばしたいところだ。
だが、今度は視界にうつるほどの距離に壁はない。
この場所から脱出する方法をついでに探し当てておきたい。
僕は何の縁もない傷の入ったランドセルと泥で名前が見えなくなった名札を持って路地を歩いていくしかなかった。
この路地に迷い込んで一体何日が過ぎてしまったのだろう。
薄暗い路地は終わりを見せる事なく永遠と道を伸ばし続ける。
一つ壁があるところにたどり着いても、何か落ちているものを拾ったりで
もすれば、すぐに終わりを示す壁はなくなってしまう。
――この道は終わることなく永遠に続くのか?そう思い始めた頃、道中に一人の余生が現れた。カメラもズームしてしまいそうな
にこやかな笑顔と学生服
(セーラー服ではなく最近のリボンなどがついた服を着ている)を着て
俺の前に立ちふさがった。
彼女が誰なのか俺には質問している余裕などない。
俺は学生服の女性から遠ざかるためあえて声をかけずに
路地を歩んでいったが、路地の先にも同じ顔立ちをした女子生徒は
立ちふさがっていた。相変わらず女子生徒は何回も路地の終わりで
俺の前に立ちふさがった。
彼女はにこやかな笑みで何かを隠し持っているみたいに両手を隠しながら
待ち構え続けた。(まだ学生だと確定したわけじゃない)
七度目か八度目あたりでようやく彼女は口を開いた。
その時は笑ったりせずに、ただまっすぐと僕のほうを見ているだけだった。しばらくすると彼女は「三並さんって本当にこうでもしないと起きないんですかー?」と
目の前にいる女性は若々しさが残っている声で問いかけてきた。
――その声は実際に彼女の口から発された言葉ではない。
どこか遠くから呼びかけられているように幾重にもエコーがかかった
サイレンを聞いているみたいに何回も同じ声がリフレインする。
「三並さーん本当に寝てるだけなんですよね?試しに頬つねってもいですか?耳元で明るい女性の声が聞こえた。
声が聞こえてくるのはすぐ近く――耳元だ。
もし本当だったら今からほっぺたを引っ張られるのか?
少し疑いながらもゆっくりと少し痛みを感じる利き手を顔のあたりまで
持ち上げてみると「うわ!本当に寝てるだけだったんですね……。ある意味尊敬ですよ」とやや笑い声の交じった言葉が聞こえてきた。
それと同時に強引に右目のほうを開かされた。
視界に映ったのは蛍光灯だった。
あまりにも眩しかったので一瞬、目を閉じたが冷静になってから
周りを見渡してみると笑顔で椅子に座っている制服姿の女性と
窓の外から日差しが入り込んでいる事に気づいた。
恐る恐る横で椅子に座って様子を見てくれている
第一印象・かわいい一択の女子に声をかけてみた。
「まず最初に聞きたいんだが、ここはどこなんだ?」と
窓の外の日差しをよけるように前かがみになりながら、
椅子に座ってのんきにスマートフォンをいじっている女子に声をかけた。
すると「三並さんバイトの途中で倒れちゃってたからさ、急いでアタシが
バイクに乗せて戻ってきたんだけど……。もしかして何も覚えてないとか?それだったら病院行かなきゃだけど……」とスマートフォンを離して
焦りを隠しながらも詰め寄るように聞いてきた。
少し目の前にいる女子――押久保は少し顔を覗き込んでから
「うーん、別に怪我とかしてないから、このままで大丈夫そうだね!
じゃあ、あたしは先輩のバイク借りとくから、仕事に戻る気になったら
スマホで教えてねー」と言い残して押久保は笑顔で部屋を離れていった。
改めて寝かされていた部屋の全容を見てみると、
最初は病院に搬送されたのかと思ったが、
ここは三並が働いているピザ屋の控え室だった。
寝かされていたのは部屋の隅にあるソファだ。
なんとなく立ち上がってみたが主に首のあたりへと
痛みが襲いかかってきた。
(押久保のやつめ……)
最初のコメントを投稿しよう!