雨、ところにより、問

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雨、ところにより、問

「やば、やりすぎた」  後ろから空木の声が聞こえた。  でも僕は振り向かない。それどころじゃなかった。  文化祭を三日後に控えた水曜日の朝のホームルーム。長靴を履いた担任をクラス全員が見つめていた。 「今朝の落雷で体育館の屋根が破損した。電気系統にも異常が見られるそうで、しばらく体育館での授業や部活動は禁止。今年の文化祭ステージはグラウンドに設営されるそうだ」  淡々とした説明にバスケ部やバレー部から不満の声が上がる。ステージ設営前でまだ良かったじゃないか、と担任がなだめた。  確かにステージ企画自体が無くなるよりはマシだ。けど。 「どうしよう」  空木の不安げな声が聞こえる。  僕が考えていた集客作戦はステージが屋内企画であることが前提のものだった。  けど、屋外。 「仕方ない。一旦あの作戦は中止しよう」 「うん。でも問題があって」 「ん?」  空木は勢いよく台本を広げてこちらに突き付ける。  それは物語のクライマックスで、王子の手により他国から助け出され自由の身となった姫が広い空を見上げる場面だ。 「私、このシーン絶対泣いちゃうの!」 「感情移入しすぎだろ」 「だってえ!」    もはや思い出しただけで泣きそうになっている。最近雨が多かったのはこのせいか。  てかそんな号泣必至の感動ストーリーだったのかよ、白雨姫。 「どうしよう。屋外ステージで雨が降ったらお客さんいなくなっちゃうよ」  空木の問いに、僕はすぐに答えを返すことができなかった。
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