暗夜の灯

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「それでは、球技大会の種目決めを行います」  クラス委員の一言に、教室がざわめき始める。  一学期最初のイベントである球技大会。  男子はサッカーとバスケ。  女子は九人制バレーとバスケ。  全員必ず何かしらには参加しなくてはいけない。  はぁ……めんどくさ。 「葵、どうする?」  前の席に座る美奈ちゃんが、クルッとこちらに身体を向けて聞いてくる。 「うーん……どっちもめんどくさいなぁ」 「バレーは屋外コートだよ。日焼けしちゃうって」  自分の腕を見ながら、美奈ちゃんがぼやいた。  確かに五月に入った今、陽射しはどんどん厳しくなって、晴れた日は特に、眩しいし痛いくらい。それを考えれば屋内バスケは魅力的なんだけど。  私は消費エネルギーを考えて、美奈ちゃんに伝える。 「でもさ、九人制だからあまり疲れないかもよ。うまい具合に上手な子が動いてくれればさ。バスケは五人だから走りっぱなしじゃない?」 「あ、それ言えてるかも!」  打算的な私の考えに、美奈ちゃんが賛同してくれた。 「はいはい!相澤(あいざわ)美奈(みな)井上(いのうえ)(あおい)、バレー希望しまーすっ!」  私の手も一緒に繋ぎ、勢いよく挙手してアピールしてくれた。  黒板を確認すると男女ともにバスケが人気みたいで、バレーを希望する私たちはすぐに決まった。 「やっぱみんな室内がいいのかな?」  バスケに人気が集中して、どうやら話し合いがされているみたい。 「それもあるけどさっ。女子のお目当ては別にもあるんだよ」  言葉と共に美奈ちゃんが指さしたのは、窓際の席に座っている日高くん。  喧騒の中、そこだけ別空間のように、頬杖をついて窓の外をただ見つめている。
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