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「彼がどうかしたの?」
「葵、しらないの?日高くん、サッカー部で一年生ながらに活躍してるみたいでね。見た目もカッコいいでしょ?人気あるんだよ~」
パシンッて勢いよく肩を叩かれる。弾むような声からして、美奈ちゃんもそう思っているんだろうな。
「そうなんだ。私……サッカー興味ないし」
「えー?サッカーに興味なくても同じクラスにイケメンいたらとりあえずチェックでしょー」
美奈ちゃんがいうように、確かにイケメンの部類かもしれない。
少し健康的に焼けた肌に、スポーツマンらしく長すぎない髪の毛。整った顔立ちで、騒がれるのもわからなくもない。でも私が気になったのは、目だ。クリッとした瞳は外を見続けていて、綺麗な顔なのに少し冷たさが宿っているように見えた。
「なんか……感じ悪くない?」
「そこがいいんだよ~。クールでかっこいいじゃん」
そういうもんなんだ。
もう一度彼の表情を見るけど、やっぱりただ冷たく感じて苦手かも。優しい人の方がいいな。
「で?なんでサッカー部の彼がお目当てでバスケが人気になるの?」
サッカー部ならサッカーでしょ?と思った私の疑問に、美奈ちゃんはため息をついた。
「葵、ちゃんと説明聞いてなかったね。現役選手はその競技には参加できないんだよ。だから日高くんは自動的にバスケで決定ってわけ」
「なるほどね」
悩む必要もないから、ああして窓の外を見つめているわけだ。
「ところでね、今度サッカー部練習試合あるんだって。一緒に見に行こうよ」
「えぇ!?」
美奈ちゃんの誘いに、全身で拒否反応を示しちゃった。私のあまりの声の大きさに、美奈ちゃんも驚いた表情を見せた。
「そ、そんなにいや?」
「あ……ごめん。サッカーは本当……ごめんね」
なんだかぎこちなくなってしまったけど、そのままホームルームが終了したので、この話はこれっきりになった。
美奈ちゃんに対する罪悪感で、思わずため息が零れる。高校に入学して知り合った美奈ちゃんが知るはずもないんだから、なにも悪くない。
悪いのは私。
いつまでも後ろ向きで、うじうじしている私。
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