暗夜の灯

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 子供の頃、私は活発な女の子だった。  女の子同士で遊ぶより、男の子と外を走り回るほうが好きだった。  小学校に入ったらすぐ、地元のサッカーチームに入った。女の子も数人いたから心細くなかったし、正直同年代の男の子に負ける気がしなかった。実際、負けなかった。  ……十歳までは。  少しずつ、異変を感じていった。自分では何も変わっていないつもりだった。  だけどその頃から、自分の持ち味だったはずのスピードが、通じなくなっていった。カウンターで追いつかれることが増えて、当たりで負ける事が増えていった。  それは私が変わらなくなるタイミングで、男の子達が身体的に伸びていったから。どんどんと成長していく彼らに、私はついていく事が出来なくなって。  そして……レギュラーから外されることになった。  サボったわけじゃない。いっぱい練習していたし、負けん気で頑張っていた。そのはずなのに……  男子についていけなくなり、だったら女子サッカーで……というのは難しかった。うちの周りでは女子サッカーチームはなかったから。  ボールを追いかけるかつての仲間を、ただ見ているしかできない。それはものすごくさみしかった。もうあの中に入れない。一緒にプレーできない。  その現実を受け止められなくて、私はサッカーから離れていった。  あれから約五年。  サッカーをすることはもちろん。見ることもない。  スポーツに本気で向き合うこともやめてしまった。 「ちっさ、私」  いつまでもウジウジと。  そう思いながらもあの時の劣等感が胸を締め付ける。
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