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「そっちいったよー」
声をかけられて、隣の美奈ちゃんと目を合わせる。
━━どっちがとる?
━━葵、まかせた。
━━……わかった。
少し美奈ちゃん寄りに飛んできたボールをレシーブする。円陣バレーなんて中学の時に何度か、お遊びでやったきりだ。
こういうのはきゃいきゃい言いながら、楽しくやるものだと思っていたのに。さっきから「肘が曲がっている」とか「膝落として」とか。円陣の外からバレー部員から指導が入る。
これ、昼休みに制服でやるレベルじゃないよ。ガチの練習じゃん。
「あっ……」
美奈ちゃんがレシーブしそこねて、ボールが後ろに逸れていった。
「あ、いいよ。私がとってくる」
さっきから美奈ちゃんは失敗が続いて、その度に注意が入るから落ち込んでいるのが、見ててわかる。
何となく私が「バレーの方が楽」みたいな言い方してしまったから、美奈ちゃんに少し申し訳なく思ってしまう。
コロコロ……と転がったボールを、誰かが拾う手が見えた。
「ありがとうございま……」
ボールの行方を追いかけて、下を見ていた顔をパッとあげたら、そこにいたのは日高くんだった。
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