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クラスにいる事は知っているけど、こうして面と向かうのは初めてかもしれない。
背、高いなぁ。それとも私が低めだからそう感じるの?
どうしたって見上げる体勢になるんだけど、こうして間近でみると、確かにより整った顔立ちが際立つ。
ただ、彼の瞳が。
教室で見たガラス玉のような冷たい眼差しじゃなくて、明らかに私を見て戸惑うように揺れている。
「日高くん……?」
声をかけると、ハッとしたように身体が揺れた。
「あ、これ……」
片手でボールを掴んで渡されたのを、そっと受け取る。離れていく彼の手を、思わずじっと見つめてしまった。片手で持てちゃうくらい大きな手……
「……井上?」
声をかけられて、今度は私が狼狽えた。
「あ、なんでもないの!ただ、大きな手だな、って」
改めて思い知る。男女の違い。もう追いつかないって事を。
「葵ーっ!」
後ろから大声が飛んでくる。
ヤバッ。すっかり忘れてた。
「日高くん、ありがとう。じゃね」
お礼もそこそこに、くるりと校庭へと駆け出した。
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